一般社団法人 信州古民家再生プロジェクト 代表理事 井上陽介

「“当たり前”が“当たり前”でなくなった時代」
この十数年で社会は大きく変化し、かつて当たり前だった地域のあり方も大きく姿を変えました。いまの中高生は、情報も選択肢も、かつてないほど多い環境の中で育っています。しかしその一方で、地域との関わりは大きく減少し、孤立感を抱えやすい社会にもなっています。かつて町には、喫茶店や駄菓子屋、商店街、地域のお祭りなど、中高生が地域の大人と関わる場所がたくさんありました。そこで親や先生以外の大人と出会い、関わり、世代を超えたつながりの中でさまざまな価値観や経験に触れることができました。いま、そのような場所や施設や機会はどれほど残っているでしょうか。いまの中高生は、そのような経験や価値観とどこで触れ合うことができるのでしょうか。
「いつの間にか、外との関わりから孤立してしまった中高生」
そして現在、地方に住む多くの中高生の生活圏は「家」と「学校」の往復に限定されつつあります。地域に学校帰りに気軽に寄れる場所がなくなり、地域の人と直接関われる商店街やお店も無くなって来ています。SNSを通じたつながりは広がる一方で、顔の見える関係の中で安心して話せる場所は少なくなりました。学校では成果や進路が問われ、家庭では忙しい日常の中で十分に親と話す時間が取れないこともあります。その結果、「なんとなくモヤモヤしている」「誰かに話を聞いてほしい」といった気持ちを抱えながらも、気軽に立ち寄れる場所が見つからない中高生が増えています。
「学びは“机に座ってする”のもだけではない」
また、現代の中高生を取り巻く環境では、「失敗から学ぶ機会」も減っています。学校生活では協調性が重視され、個性的な挑戦をしにくい場面もあります。さらにSNS社会では、挑戦や失敗が批判の対象になりやすく、中高生が一歩踏み出すことへの不安も大きくなっています。しかし社会に出れば、自ら考え行動する主体性が求められます。このギャップは、中高生にとって大きな課題となっています。
昔であれば、多少の失敗も寛容に受け入れられ、笑って済まされたことも現代社会では許されないことが非常に多いです。今も昔も許されるべきではないこともありますが、現代でも笑って許してあげたり、しっかり叱ることで許してあげるべきこともあるのではないかと思います。そのような寛容性をもう一度社会が持てば、中高生はもっと気軽に自分のやりたいことに自信を持って一歩踏み出せるのではないかと感じます。
「こんな現代だからこそ、意図的にそのような環境を誰かが準備しなくてはいけない」
私は、こうした社会の変化の中で、日本には大きく三つの課題があると感じました。それは「安心して立ち寄れる居場所の不足」「親や先生以外の大人との接点の減少」、そして「失敗から学べる環境の不足」です。だからこそ私たちは、この法人の活動を通して①日常的に安心して立ち寄れる居場所の提供、②地域の大人や社会人と自然につながる機会の創出、③挑戦や失敗から学ぶ経験の場づくり、に取り組んでいます。
「この取り組みは“いまを変える”活動ではなく“未来を支える”活動」
これらの取り組みは、今すぐ社会を大きく変えるものではないかもしれません。しかし、10年後に地域で働き、地域を支える若者を育てることにつながると確信しています。いま目の前にいる若者たちは、数年後にはこの地域で働き、暮らし、次の世代を育てる存在になります。若者を支えることは、未来の社会を支えることでもあります。私たちの活動は、その未来を地域全体で育てていくための入口です。企業や地域の大人が若者と関わることで、世代を超えた相互理解が生まれ、地域社会はより豊かなものになります。
ぜひ多くの企業や団体の皆さまにこの活動をご理解いただき、共に10年後の地域の未来を育てていければ幸いです。
2022年2月22日
一般社団法人 信州古民家再生プロジェクト
代表理事 井上陽介
